センターの特徴
平成26年9月1日より、外科と小児外科による「鼠径(そけい)ヘルニア・臍(さい)ヘルニアセンター」を開設しました。いままで、小児の症例を多く診ておりましたが、「鼠径ヘルニア・臍ヘルニアセンター」にすることにより、小児から成人、高齢者まで、幅広い年齢層の鼠径ヘルニア(=脱腸)、臍ヘルニア(でべそ)の患者さんを受け入れる体制を整備しました。
診療内容
鼠径ヘルニア(=脱腸)は子供の病気と思われがちですが、実は成人にも多い疾患です。
また、臍ヘルニアは"でべそ"と言われ美容上、悩んでいらっしゃる場合が多い疾患です。
当院では患者さんの負担ができるだけ少なくなるよう、腹腔鏡による手術(鼠径ヘルニアのみ)や日帰り手術を積極的に行っています。
気になる症状などがあれば、まずは外来へお越し下さい。(予約は不要です)
医師の紹介
-
山本 浩史(やまもと ひろし)院長
鼠径ヘルニア・臍ヘルニアセンター センター長
経歴 |
1986年 |
3月 |
北海道大学医学部 卒業 |
1986年 |
8月 |
北海道大学医学部 小児科 |
1988年 |
4月 |
日鋼記念病院 小児科 |
1990年 |
4月 |
日鋼記念病院 外科 |
1993年 |
4月 |
市立苫小牧総合病院 外科 |
1994年 |
4月 |
日鋼記念病院 外科 |
1995年 |
4月 |
北海道大学医学部 第一外科 |
1997年 |
4月 |
網走厚生病院 外科 |
1998年 |
4月 |
北海道大学医学部 第一外科 |
1999年 |
4月 |
北海道大学医学部 第一外科 助手 |
2002年 |
4月 |
天使病院 外科 |
2003年 |
7月 |
天使病院 小児外科 科長 |
2004年 |
7月 |
天使病院 臨床研修室 室長 |
2008年 |
4月 |
天使病院 外科・小児外科 科長 |
2011年 |
6月 |
天使病院 外科・小児外科 主任科長 |
2013年 |
2月 |
天使病院 救急センター センター長 |
2013年 |
4月 |
天使病院 外科・小児外科・乳腺外科 主任科長(~2017年9月) |
2014年 |
9月 |
天使病院 鼠径ヘルニア・臍ヘルニアセンター センター長 |
2017年 |
4月 |
天使病院 情報管理部 部長 |
2017年 |
6月 |
天使病院 副院長(〜2020年5月)、診療第2部 部長(〜2022年3月) |
2018年 |
6月 |
天使病院 患者サポートセンター センター長 |
2019年 |
6月 |
天使病院 薬剤部 部長 |
2020年 |
6月 |
天使病院 院長補佐 |
2022年 |
4月 |
天使病院 診療第1部 部長(〜2023年3月) |
2024年 |
10月1日 |
天使病院 院長 |
|
専門医
認定医 |
日本外科学会 専門医
日本消化器外科学会 認定医 |
専門・得意分野 |
一般外科、小児外科 |
趣味・特技 |
ハンドボール |
-
中山 雅人(なかやま まさと)副院長・診療第2部 部長
経歴 |
1989年 |
3月 |
弘前大学医学部 卒業 |
1989年 |
4月 |
北海道大学医学部第1外科 |
1989年 |
6月 |
北海道大学医学部附属病院 |
1990年 |
4月 |
旭川厚生病院 外科 |
1991年 |
4月 |
国立札幌病院 外科 |
1992年 |
4月 |
旭川厚生病院 呼吸器外科 |
1993年 |
4月 |
北海道大学医学部附属病院 |
1994年 |
4月 |
幌南病院 外科 |
1997年 |
4月 |
市立稚内病院 外科 |
1999年 |
4月 |
斜里町国保病院 外科 |
2000年 |
4月 |
上川町立病院 外科 |
2000年 |
12月 |
北海道大学医学部第1外科 研究 |
2003年 |
4月 |
天使病院 外科 |
2008年 |
4月 |
天使病院 外科・小児外科 科長 |
2013年 |
4月 |
天使病院 外科科長 |
2017年 |
6月 |
天使病院 乳腺外科 科長 |
2017年 |
9月 |
天使病院 外科・小児外科・乳腺外科 主任科長 |
2022年 |
4月 |
天使病院 副院長・診療第2部 部長 |
|
専門医
認定医 |
日本外科学会 専門医
日本消化器外科学会 認定医 |
専門・得意分野 |
一般外科 |
-
大場 豪(おおば ごう)外科・小児外科・乳腺外科 主任科長
経歴 |
2005年 |
4月 |
天使病院 初期臨床研修医 |
2007年 |
4月 |
天使病院 外科・小児外科 |
2008年 |
5月 |
日鋼記念病院 外科・小児外科 |
2009年 |
4月 |
北海道大学病院 第一外科 |
2010年 |
4月 |
東京都立小児総合医療センター小児外科 |
2013年 |
4月 |
天使病院 外科・小児外科 |
2015年 |
6月 |
天使病院 小児外科科長 |
2017年 |
6月 |
天使病院 外科科長 |
2022年 |
4月 |
天使病院 外科・小児外科・乳腺外科 主任科長 |
2024年 |
4月 |
天使病院 臨床研修室 室長 |
|
専門医
認定医 |
日本外科学会 専門医
日本小児外科学会 専門医・指導医
日本消化器外科学会 専門医・指導医
日本消化器外科学会 消化器がん外科治療認定医
日本がん治療認定医機構 がん治療認定医
日本乳癌学会 乳腺認定医 |
専門・得意分野 |
一般外科、小児外科、乳腺外科 |
-
湊 雅嗣(みなと まさし) 小児外科 科長
経歴 |
2006年 |
3月 |
北海道大学医学部 卒業 |
2006年 |
4月 |
天使病院 初期臨床研修 |
2008年 |
4月 |
天使病院 外科・小児外科 |
2009年 |
4月 |
北海道大学病院 消化器外科Ⅰ(後期研修) |
2011年 |
4月 |
神奈川県立こども医療センター 外科 |
2013年 |
4月 |
北海道大学病院 消化器外科Ⅰ |
2017年 |
6月 |
天使病院 小児外科科長 |
|
専門医
認定医 |
日本外科学会 専門医
小児外科学会 専門医
医学博士 |
専門・得意分野 |
小児外科 |
-
浜田 和也(はまだ かずや)医師
経歴 |
2014年 |
3月 |
山形大学医学部 卒業 |
2014年 |
4月 |
山形市立病院 済生館 |
2019年 |
4月 |
北海道大学病院 消化器外科Ⅰ |
2020年 |
4月 |
帯広協会病院 外科 |
2021年 |
4月 |
北海道大学大学院医学院 消化器外科学教室Ⅰ 入学 |
2024年 |
4月 |
天使病院 外科・乳腺外科、小児外科 |
|
専門医
認定医 |
日本外科学会 外科専門医 |
専門・得意分野 |
外科・消化器外科 |
趣味・特技 |
犬の散歩 |
-
佐野 峻司(さの しゅんじ)医師
経歴 |
2019年 |
3月 |
北海道大学医学部 卒業 |
2019年 |
4月 |
砂川市立病院 初期臨床研修 |
2021年 |
4月 |
北海道大学 消化器外科Ⅰ |
2022年 |
4月 |
KKR札幌医療センター 外科 |
2023年 |
4月 |
釧路労災病院 外科 |
2024年 |
4月 |
天使病院 外科・乳腺外科、小児外科 |
|
専門・得意分野 |
消化器外科 |
趣味・特技 |
ピアノ、スキー |
フリーコメント |
精一杯尽力してまいります。よろしくお願いいたします。 |
鼠径ヘルニア(脱腸)の手術について
- 鼠径ヘルニアの手術はほぼ全て腹腔鏡下で行っています。小児外科 鼠径ヘルニアの腹腔鏡手術
- 小児の場合、ご家族の入院希望がない限り日帰りです。
- 成人は2~4泊程度の入院で行う場合が多いですが、ご本人の状況に応じて日帰り手術も可能です。
- 鼠径ヘルニア(脱腸)とは
鼠径ヘルニアは鞘状突起(しょうじょうとっき)が開きっぱなしのまま生まれてきたために起こる先天的な疾患です。腹壁(おなかの壁)は外から皮膚、皮下脂肪、筋肉、腹膜(おなかの膜)の順に並んでいますが、腹膜が股のところでふくらんでいるところを鞘状突起といいます。鞘状突起は男性では陰嚢内まで、女性では恥骨まで続いています。腹膜でおおわれたおなかの中には腸、胃、肝臓などが入っています。女性では卵巣もおなかの中にあります。鞘状突起が開いているために、そこに腸が出入りするので「脱腸」といいます。
- 手術の適応
- 手術が絶対に必要。ときに緊急手術。
腸が出入り自由な時は、痛みもなくただ出ているだけなので心配ないのですが、腸が出た時に根元の筋肉に締め付けられることがあり、これを絞扼(こうやく)といいます。これを放置すると大変危険で、6時間以上経つと腸の血の巡りが悪くなって、腸に穴が開いてしまいます。そうなると腹膜炎になり大きな手術をして腸を切らなければなりません。
絞扼(こうやく)を見つけることは簡単で、
- 激痛のため激しく泣く(今までにない、狂ったような泣き方)
- ヘルニアのふくらみが硬くなっていて、そこを触らせてくれないほど痛がる
などが典型的な症状です。
絞扼(こうやく)した時には、あわてずに以下の手順で対応してください。
- 食べたり飲んだりすることをすぐに中止する(緊急手術の可能性があるため)
- お子様を抱っこしたりあやしたりして落ち着かせる(無理なことが多い)
- 病院に電話してから自家用車やタクシーで病院に向かう(救急車は使わない)
電話番号 |
011-711-0101(天使病院 代表) |
- 急ぎではないが将来のことを考えると手術したほうがいいと思われるもの
鞘状突起(しょうじょうとっき)は生まれてからは自然に閉じることはないとされています。しかし1歳未満で発症したこどもの6人に1人が、約半年後に出なくなったという報告があります。鞘状突起が開いているのに出なくなるのは、筋肉がシャッターのようにおおって出さないようにするためです。
ですから、歳をとって筋肉が弱まった時に出てくる人がいるのです(鼠径ヘルニアは小児と高齢者に多い)。経過をみてから手術しても遅くはないとも考えられます。
ただし、集団生活を始めて他人との違いがわかる4から5歳頃までには手術したほうがいいかなと思います。またその頃までにすると、ほとんど記憶に残らないと思います。
このような状況では、急ぎではありませんので、ご家族の都合(ご両親の休暇や付き添い、他に小さなお子様がいらっしゃる、お母さんが妊娠中など)に合わせて手術の予定を立てることが可能です。
- 手術をしない
実際に手術をしないまま成人している人もかなりいます。
ご本人は当たり前のように慣れてしまっていて、苦痛はないようです。成人してからの手術は傷が少し大きくなったり、仕事などに支障をきたす恐れがあったり、また女性の場合妊娠中に出ることがありますが、ご本人やご家族の考え方次第です。
- 手術の内容
鞘状突起(しょうじょうとっき)の根元が開いているのが原因なので、その根元を縛っておしまいです。
当院では腹腔鏡手術を導入しています。臍上部を7mmほど切開して、腹腔鏡といわれるカメラを入れて、おなかの中から鞘状突起の開存を確認します。左の脇腹と、鞘状突起の根元直上に針穴をあけて、根元を縛る手術をします。
腹腔鏡のメリットとして、
- 傷が小さく目立ちづらいこと
- 両側のヘルニアが10%といわれており、腹腔鏡で両側の鞘状突起開存が確認できた場合は両側とも治療できること
があげられます。両側とも治療する場合は針穴がもう一つ増えることになります。
腹腔鏡で縛ることが難しい場合は、従来のやりかた(下腹部のしわに沿って2cmほどの切開)に切り替えることがあります。
手術時間は麻酔の時間が手術前後合わせて1時間前後、実際の手術は30分程度です。傷は将来ほとんど見えないくらいに薄くなります。
- 手術の危険性
- 全身麻酔...約10万回に1回の死亡率
天使病院で行われる全身麻酔は低出生体重児から高齢者まで合わせて1年間に約1000件です。単純計算で100年に1回の極めてまれな出来事です。起こる出来事は麻酔薬に対する強烈なアレルギー反応による呼吸障害や不整脈や血圧低下などの循環障害です。
誰に反応が起こるのかを前もってわかることができないので、全員に起こることを想定して行われています。手術室は緊急に対応できるもっとも安全な場所ですので、ほとんど心配はありません。
- 出血...にじむ程度の出血量
- 感染...ほとんど起こりません
感染とは傷が化膿することですが、傷が小さくて浅い、時間のかからない手術ですので、ほとんど起こることはありません。ただしもし万が一感染した時には、傷を少し切開してうみを出す処置が必要なことがあります。
- 手術の予定の立て方
小児の鼠径ヘルニアの手術は、原則として月〜金曜日の午前中に行っています。
入院は、次の2通りの方法があります。
- 日帰り(1日入院扱い)...手術当日、朝来院して手術を受け、夕方に帰宅する。
- 1泊2日...手術当日、朝来院して手術を受け、翌日退院する。
日帰りか1泊2日かは、お子さんの年齢、お宅からの距離、ご家族の都合などを考慮して決めています。
手術を希望される場合は、以下の手順で進めさせていただきます。
- 希望日を2、3日決めてください。
- 遅くともその日の2週間前に再受診してください。再受診された時に手術の日時を決定いたします。
また同時に麻酔に必要な検査(血液検査、胸部レントゲン、心電図)を行います。
- あとは手術の週に麻酔科外来(月~金の午前9:30)を受診していただき、麻酔科医の診察と説明を受けていただきます。
- 手術予定を立てた後に病気をしたとき
すぐにご連絡をお願いいたします。発熱、ひどいせき、ひどい鼻水などは麻酔の障害になることがありますので、状況によっては一度延期して、治ってから予定を立て直したほうが安全です。ただし絞扼(こうやく)は待てませんのですぐに対処させていただきます。
- ワクチンとの関係
ワクチンを受けた後は1〜3週間あいだをあけてから手術します。ワクチンによって発病したり、ワクチンの効果が弱くなったりすることがありうるためです。
期間はワクチンの種類によって異なるので、外来で相談してください。
術後のワクチンは1週間を過ぎて全身状態がよければ受けることが可能です。
- 手術当日のスケジュール
麻酔科医から説明される手術前夜と当日朝の絶飲食の指示をお守りください。
麻酔をかける時に胃に物が入っていると、吐いてつまらせる危険性があるからです。
小児外科外来に8:30までにいらしてください。
簡単な診察の後で着替えをしてもらいます。
手術室への入室は9:00ころか10:30ころです。
入室後1時間半前後で手術が終了して病棟に入院します。
手術が終った直後は、まだ麻酔がさめきっていないので異常に興奮していることがあります。しかし心配は不要です。少し騒いだ後に3〜4時間眠ると麻酔は完全にさめます。さめた後は飲んだり食べたりでき、その時点で点滴を抜きます。その後退院手続きと次週の外来予約が終わると退院可能です。
傷は細い溶ける糸を使って、糸が皮膚の下に埋まってしまうように縫いますので、抜糸はありません。
消毒やガーゼは不要です。当日から入浴可能です。食事制限や運動制限もありません。
退院前に次回の小児外科外来受診日(月・木・土曜日の午前か水曜日の午前・午後)を予約してください。
手術後は一度受診していただくだけで通院は不要です。
- 鼠径ヘルニア(脱腸)とは
本来はおなかの中にある腸管などの内臓が、筋膜の隙間から飛び出してくる状態です。先天的なことが原因の小児と異なり、成人では体の筋力が弱くなることや、運動不足などが原因となります。足の付け根の部分(=鼠径部)から飛び出すことが多く、股の部分が膨らむことで発見されます。ほとんどは無症状ですが、違和感や痛みを伴う場合もあります。手術以外に治療方法はありません。
- 手術の内容
当院では腹腔鏡手術を導入しています。臍上部を15mmほど切開して、腹腔鏡といわれるカメラを入れて、おなかの中から脱腸の原因となっている場所を確認します。そのほか左右の脇腹に5mmほどの穴をあけます。成人では小児と異なり、組織が弱いことが原因なので補強が必要になります。医療用のメッシュを挿入して飛び出す穴を塞ぎます。腹腔鏡のメリットは、
- 傷が小さく目立ちずらいこと
- 両側の観察が可能なこと
⇒腹腔鏡で両側に脱腸の原因となる穴が確認できた場合は,同時に両方とも治療することが可能
が挙げられます。
腹腔鏡で手術することが難しい場合は、従来のやりかた(下腹部のしわに沿って5cmほどの切開)に切り替えることがあります。過去に下腹部の手術や、前立腺の手術を受けたことがある方は、受診時に医師にご相談ください。
手術時間は片方で1時間半前後です。
- 手術の危険性
- 全身麻酔...約10万回に1回の死亡率
天使病院で行われる全身麻酔は低出生体重児から高齢者まで合わせて1年間に約1000件です。単純計算で100年に1回の極めてまれな出来事です。起こる出来事は麻酔薬に対する強烈なアレルギー反応による呼吸障害や不整脈や血圧低下などの循環障害です。
誰に反応が起こるのかを前もってわかることができないので、全員に起こることを想定して行われています。手術室は緊急に対応できるもっとも安全な場所ですので、ほとんど心配はありません。
- 出血...にじむ程度の出血量
- 感染...ほとんど起こりません
感染とは傷が化膿することですが、ほとんど起こることはありません。ただしもし万が一感染した時には、傷を少し切開してうみを出す処置が必要なことがあります。また、メッシュは感染に弱いため、感染の状態によってはメッシュを摘出する手術が必要になることがあります。
- 再発
メッシュの位置がずれたり、他に弱い場所ができて再発することが報告されています。再発した場合は再手術になります。
- 手術の予定の立て方
原則として月~金曜日毎日行っています。 手術前日に入院していただきます。術後は傷の痛みの程度次第で退院日が決まります。通常は術後2-3日の入院ですが、ご希望に応じて手術当日の退院も可能です。傷は細い溶ける糸を使って、糸が皮膚の下に埋まってしまうように縫いますので、抜糸はありません。 消毒やガーゼは不要です。 食事制限や運動制限はありません。
腸が出入り自由な時は、痛みもなくただ出ているだけなので心配ないのですが、腸が出た時に根元の筋肉に締め付けられることがあり、これを絞扼(こうやく)といいます。
これを放置すると大変危険で、6時間以上経つと腸の血の巡りが悪くなって、腸に穴が開いてしまいます。そうなると腹膜炎になり大きな手術をして腸を切らなければなりません。
基本的には激痛ですので、絞扼(こうやく)した場合はすぐに分かると思います。
絞扼(こうやく)した時には、 あわてずに病院までご連絡ください。
臍ヘルニア(でべそ)の手術について
- 臍ヘルニアとは
俗に言う「でべそ」である。胎児のへその緒の中には3本の重要な血管が通っている。胎児のへその下の筋肉には穴があり、血管はその穴を通って筋肉と腹膜の間に入っている。筋肉の穴が閉じると胎児は生きられないので、へその下の筋肉の穴は絶対に必要である(右図)。
生まれた後はへその緒が切り離され、へその緒の血管は不要になる。へその下の筋肉の穴は自然に閉じてへそは引っ込む。
赤ちゃんはおなかがポッコリ出ていてよく泣くので、筋肉の穴が閉じる前に腹膜が伸ばされてへそが膨らむ(右図)。したがって泣いて腹圧が上がればへそは大きく出るし、眠って安静の時はへそが縮む。膨らんだり縮んだりすることは、ほとんど心配ない。
- 臍ヘルニアの経過
筋肉の穴の直径が3cm以下であれば、2歳までに90%の確率で治るとされているので、手術は1歳半以降に行うようにしている。
- 圧迫法について
昔から「へそに5円玉を当てて圧迫すると治りやすい」という治療が一部で行われていた。最近、「へそに綿を詰めてテープで押さえると治る時には引っ込んで治りやすい」とされ、一部の施設で行われている。治る時にはきれいに治りやすいとされているが、放っておいても90%治るとされているし、テープの貼り替えやかぶれ、はずれた時の対処など煩雑な面もあるので、賛否両論である。
- 手術(臍形成術)とは
へそを造る手術である。手術の適応は「美容上の問題」であるので、全身状態がいい時にいつ行ってもよい。本人が気にしたり引っ張ったり、幼稚園や学校でいじめられたり、などを考えると2~3歳頃がよいと思う。傷の痛みも大きい子の方が強いので、嫌な思いが記憶に残る前にやってしまいたい。遅くて手遅れになることはない。
手術では、まずへその中を縦に切開してへその裏をはがす。筋肉の穴が原因なので、筋肉の穴を閉じてからへその皮膚を裏返して筋肉に固定し引っ込める。あとは傷を細い溶ける糸で縫って終了する。糸は埋めるように縫うので、表面に糸はなく抜糸もいらない。体表だけの手術で1時間以内に終わるので、ほとんど日帰り手術でできる。
- 手術の危険性
- 全身麻酔:死亡率10万回に1回程度とされている。当院では500gの低出生体重児から90歳すぎの高齢者まで、1年間に約1000件の全身麻酔を行なっているので、単純計算では100年に1回程度の危険性である。子供たちが暴れると危険であるし、つらくてかわいそうなので全身麻酔が必要である。
- 感染:傷が化膿する。確率は数%程度とされている。術後は感染予防のために抗生剤を飲む。それでも感染した時には、傷を少し開いて膿を出す処置が必要である。
- その他:ほとんど合併症はない。
- 日帰り手術について
原則として月、火、水、金曜日の午前中に行う。ほとんどが日帰り(1日入院扱い)だが、術後1泊してもよい。日帰りか1泊2日かは、年齢、家からの距離、ご家族の都合などを考慮して決める。手術希望日は来院時に決めてもいいし、2、3の候補日を選んでから電話で決めてもよい。麻酔に必要な検査(血液検査、胸部レントゲン、心電図)は2カ月以内に行う。あとは手術の数日前に麻酔科外来(月~金の午前8:30)を受診して診察と説明を受ける。
- 予定を立てた後に病気をした時
すぐに連絡する。発熱、ひどいせき、ひどい鼻水などは麻酔の障害になるので、状況によっては一度延期して、治ってから予定を立て直した方が安全である。
- ワクチンについて
ワクチンを受けた後は1〜3週間あいだをあけてから手術する。ワクチンによって発病したり、ワクチンの効果が弱くなったりすることがありうる。期間はワクチンの種類によるので、外来で相談する。術後のワクチンは1週間を過ぎて全身状態がよければ受けられる。
- 手術当日のスケジュール
- 麻酔科医から説明される手術前夜と当日朝の絶飲食の指示を守る。麻酔をかける時に胃に物が入っていると、吐いてつまらせる危険性がある。
- 入院受付に8:30までに来る。その後外科・小児外科外来で簡単な診察をしてから着替える。手術室へは9:00か10:30頃に入室し、1時間半前後で手術が終了して病棟に入院する。
- 手術が終った直後は、まだ麻酔がさめきっていないので異常に興奮していることがあるが心配はない。少し騒いだ後に3〜4時間眠ると完全にさめる。さめた後は飲んだり食べたりでき、その時点で点滴を抜く。その後退院手続き、抗生剤の受取、次週の外来予約をして退院する。
- 傷に消毒やガーゼはいらない。当日から入浴可能で、食事制限や運動制限もない。
- 術後経過
術後1週、1カ月、6カ月に外来で形をみる。へその形は背が伸びたり太って皮下脂肪が増えたりすると変わるので、なかなか評価は難しい。なるべく小さくて縦長のへそを目指して造っている。