「感染予防接種」について
2008年04月01日
被害者と加害者
もしもあなたの子どもが道で他の人にカッターで切られたならあなたの子どもは被害者です。もしもあなたの子どもがカッターで他の人を切ったなら加害者です。どちらになりたいでしょうか。当たり前ですが、私はどちらになってもらっても困ります。
何の話かと思ったかもしれません。実は感染症の話です。昨年全国で麻疹(はしか)が流行し、いくつかの学校が休校になりました。また今年も麻疹の発生のため大学入試で会場変更があったことなどもご存知かもしれません。その時麻疹にかかった人は他の人からうつったのですから被害者です。でもそのあと他の人にうつしていれば加害者になってしまうのです。熱が出て病院を受診したとき、つまり被害を受けたことが分かった時、すでに他の人にうつし始めています。もう加害者です。被害者にも加害者にもならないためにどうしたらよいのでしょうか。
通り魔を避けるには外に出ないことです。感染症の流行の時に外に出ないと感染の危険性は低くなります。でも出ないわけにはいきません。では防弾チョッキを着けたらどうでしょうか。これでかなり防げます。麻疹などの感染症に対する防弾チョッキは予防注射です。子ども自身を守るため、また他の人を傷つけないように、是非予防注射を受けてください。
感染症による被害
実際の被害を考えてみます。例えば麻疹です。かかった人のうち約3割に肺炎、中耳炎、心筋炎、脳炎などの重い合併症がでます。脳炎は1,000人から2,000人に1人位出て致死率15%、精神発達遅延や麻痺などの後遺症も20 〜40%といわれています。また麻疹に感染した1人あたりが、予防接種を受けていない免疫のない人にうつす数は12人から18人といわれています。現在予防接種がかなり行き渡って死亡する人はずいぶん減りました。20年くらい前では日本国内で多い年で100人ほどが麻疹で亡くなっています。最近は毎年10人以下でしょうか。でもやはり亡くなっています。予防接種の安全性は100%ではありません。が、実際の病気と比べると桁違いに安全です。是非予防接種を受けていただきたいと思います。
下のリストは現在日本で一般的に行われている予防接種です。これらでもこの他のワクチンでも、場合により、受けた方がいい時(RSウイルスワクチンなど)、受けないほうがいい時(アレルギーなど)、受けられない時(特定の薬を飲んでいるなど)があります。またロタウイルスワクチンなど現在開発中のものもあります。気になりましたならご相談ください。
主な予防接種の種類
ジフテリア | 百日咳 | 破傷風 | 結核 |
麻疹(はしか) |
風疹 (三日ばしか) |
ポリオ | インフルエンザ |
B型肝炎 |
水痘 (みずぼうそう) |
流行性耳下腺炎 (ムンプス、おたふくかぜ) 等 |
自己紹介いたします
今年の1月から天使病院の小児科に赴任しました飯塚 進(いいづか すすむ)と申します。
天使病院の小児科では、子どものかかるふつうの病気の医療(一般医療)をはじめ、1,000グラム未満などとても小さく生まれた赤ちゃんや手術の必要な 赤ちゃんの医療、慢性的な病気の子どもの医療(専門医療)を行っています。また札幌市の北区、東区をはじめ他地域の医療機関から紹介していただいたお子さ んの二次、三次医療も行っています。
4月から急性期を過ぎた小さな、または病気の赤ちゃんの継続保育を行うGCU(Growing Care Unit)が出来ました。ご両親をはじめ他の家族にも安心できる、明るい環境にしたいと思います。より良い医療を提供できるよう、またご家族も安心していられる環境を作るよう努力します。